「沖縄風水学」とは

和来龍

2022年11月02日 08:00

 沖縄風水アカデミーは、沖縄に深く根を下ろしている風水を研究することによって有益な知恵を見つけ出し、現代の生活に役立てることを目的としています。
 そのために、琉球王朝時代の古文書や建築物、集落などを研究して現代の家づくりやまちづくりに役立てることができるノウハウを抽出し、科学的な視点も取り入れて実践してきました。
 最も大きな研究成果は、「沖縄の風水は蔡温の風水思想の影響を多大に受けていることが確認できたこと」でした。それは、中国福建の風水を取り入れながら沖縄の風水として独自に工夫を加えて発展させたもので、沖縄の国づくりにおいて際立った業績を残しています。



 本アカデミーでは、蔡温の思想を中心とした沖縄の風水を「沖縄風水学」として体系づけ、2022年10月に「沖縄風水学」の独習書として『「沖縄風水学」入門』和来龍著を出版しました。この本では、沖縄の古代信仰や風水の受容されていくプロセス、風水思想に基づいた琉球王国の基盤整備事業、具体的な風水術、現代への応用方法などについて解説しています。沖縄の風水に興味のある方は是非ご覧になって下さい。




 ところで、『沖縄の風水』窪徳忠編において「近世沖縄における風水の受容とその展開」を執筆した都築晶子氏は、広範な歴史文献資料研究から沖縄の風水の特徴を明らかにし、多大な影響を及ぼした蔡温の思想の重要性を次のように指摘しています。
 蔡温、この近世琉球を象徴する人物については、従来さまざまな視角から論じられてきた。蔡温は十八世紀前半、尚敬王の下で三司官(宰相)となり、林政・農政・水利・民衆教化などの諸政策を実施し、近世琉球の政治史に深い影を落とした。
 その一方、蔡温は和文・漢文の多数の著述を残し、思想家としても大きな足跡を残したのである。蔡温の思想は多面的であり、単に儒学者としてのみ一元化してしまうことはできないであろう。〈中略〉蔡温は儒学者であると同時に風水などの術にも通暁しており、こうした多面性を視野に入れた蔡温の儒学思想の把握が必要ではないだろうか。
〔出典:蔡温の儒家思想について―『要務彙編』をめぐって―/都築晶子/『龍谷大学論集』445号龍谷学会/1995年〕


 また、蔡温研究の第一人者糸数兼治氏は蔡温とその思想について次のように述べています。
 蔡温は倫理〔人間の理(性)、五倫五常〕と風水技術(自然の理、五行)を活用して琉球を恒常的安定的な自立国家に造り変え、「百世ニ安ンゼン」としたのではなかろうか。
 国とは土地と人民であり、土地を治めるには風水をもってし、人民を治めるには儒教倫理が有効であった。儒教思想は漢代から清朝にいたるまで政治支配のイデオロギーとして活用され、実効あるものであった。程子がいうように「儒教でなければ天下は治まらない」のである。決して使い捨ての古ゾウリなどではない。儒教思想の前提である厳しい身分階級社会が消滅した現代政治の実際面でも十分に使用にたえうるものを持っていると信ずる。ただ金科玉条、教条的原理主義、リゴリズムに陥ることを儆戒すれば足りると考える。
 儒教思想は中国思想の根幹をなすものであって、自覚するかしないかは別として中国人の骨肉に深く浸透し抜きがたいものになっている。いわば「須臾モ離ル可カラザル」ものである。その廃絶は中国の崩壊を意味する。いくらマルクス、レーニン主義といっても、儒教思想に支えられたそれであって、ロシアなどの共産主義とは異なる。
 蔡温の儒学(朱子学)研究の水準は沖縄における最高の到達点を示すもので、沖縄の知的遺産であるにちがいない。これを後世に伝えることは後学の義務ではないかと考える。不十分ながら訓注を作るゆえんである。蔡温研究の隆盛を願ってやまない。
〔出典:『蔡温(具志頭親方)漢文著作注解(上) 客問録・家言録・一言録』/糸数兼治注解/私家版/2014年〕


 蔡温の思想や哲学は宗教や政治、風水と関係していて、とても広範で簡単に理解できるものではありませんが、蔡温の思想から得られる英知は現代に生きる私たちにとっても人生の羅針盤として必ず役に立つと考えられます。それは儒教を中心として仏教や道教の影響も受けながら、現実生活に役立つ実理実用の学問として集約されていると言えます。
 したがって、儒教や仏教、道教についても蔡温の著書をもとに古書を辿りながら理解を深めていくことになるため、「沖縄風水学」は際限のない学びといえるかもしれません。

 今、宇宙の真理に到達することができる高くそびえる山をイメージしてみてください。
 頂上がかすんで見えないその山からは四方八方に龍脈が伸びています。その枝分かれした龍脈の一つに「蔡温」という高い山があります。蔡温山には登り口がいくつかありますが、「風水」と書かれた入口から登っていくのが「沖縄風水学」です。



山の頂上には天につながる道がある?

「沖縄風水学」入門や「週刊かふう」、ブログなどを読んで沖縄の風水に興味を持たれた方が自力で蔡温山に登って行かれることは大歓迎です。山道で出会えば励みになり、情報交換する楽しみもあります。

 また、ガイドや仲間と一緒に登りたいという方のために、2023年から沖縄風水学基礎講座を開設する予定で準備を進めています。準備が整いましたら、後日このホームページでご案内いたします。
 ただし、この講座は風水師の資格を与えるものではありません。蔡温の風水思想にはどんな職業にも応用できる内容があります。それぞれの職業や生活に風水思想を生かして、自然体で天地の気を得て暮らせるようになるための沖縄風水学の基礎を指導します。そのため、対面形式での個人レッスンが基本になります。

〔備考:沖縄風水アカデミーは和来龍の私的研究機関であり、運営主体は風水デザイン-office 和来-です〕


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