沖縄・琉球風水師
「和来龍(わらいりゅう)」
週刊かふう 第23回 鬼(門)も角がなければ吉となる
2022 / 05 / 13

「週刊かふう」は琉球新報社の住宅情報誌です。
 2020年4月から月一回、第4金曜日の号に「風水看がみる景色」としてエッセイを連載しています。新たな琉球風水レッスンの中で、これまでの掲載内容を順次紹介していきますので、おもしろ楽しく読んでみて下さい。

◆第23回 鬼(門)も角がなければ吉となる◆
 「鬼門」は家相で大変恐れられている。
 北東の艮(うしとら)方位を表鬼門、南西の坤(ひつじさる)方位を裏鬼門、北東・南西を結ぶ線を鬼門線と呼ぶ。
 そして、「鬼門からは鬼が出入りするので、家の北東隅には門や玄関、窓を開けてはならない」とか、「鬼門方位や鬼門線上にトイレや台所、浴室などの水周りがあるのは大凶」などと言う。

 『山海経※1』に、「東海の度朔山に大きな桃の木があり、枝は曲がりくねって三千里にも及び、その枝間の東北を鬼門という。ここは万鬼が出入りする所である。そこに神人がいて、悪害をなす鬼は葦(あし)の縄で捕らえて虎に食べさせた。黄帝は時(大晦日)の儀礼を作ってこれに替えた。桃人を飾り、葦縄を垂らし、神人、虎を門に描くことによって悪鬼の進入を防いだ」とあり、これが鬼門のイメージになったと言われている。
 つまり、鬼門は方位だけでなく時間との関係が深いのだ。1年でみれば、「丑月」は12月、「寅月」は1月で、その境界は大晦日となるため黄帝の鬼門儀礼につながる。1日でみれば、「丑寅」の時刻は午前1時から5時の間。この時間帯は闇と静寂が支配し、鬼神や幽霊が出やすいと恐れられていた。これは鬼門のイメージそのものだ。

 ところが、『黄帝宅経※2』には、「陽宅(住居)では、鬼門の方に家をつくれば気を塞ぐので、欠けて薄く、空にするのが吉」とある。

上江洲家住宅正門
石垣殿内とも言われる上江洲家住宅の立派な石垣と竹垣のヒンプン

 久米島の上江洲家住宅では、敷地の北東は冬の季節風から屋敷を守るために厚い屋敷林になっている。

上江洲家住宅建物配置図
上江洲家住宅建物配置図(イラスト:ズケラン ナオト)

 一方、石垣は敷地の北東隅を切り欠いて大きく回し、北東の一部は石が少し積み残されている。石垣を低く積むことで夏の風通りを良好にして湿気を逃がす仕組みと見て取れた。この住宅に施された風水は、『黄帝宅経』を理解した上で、沖縄の気候風土に合わせて工夫されているのだ。

上江洲家住宅積み残された石垣
子孫の繁栄を願ってわざと積み残された上江洲家住宅の石垣は光と風を通す風水の知恵

 鬼門は、本土の家相では誤って解釈されて忌み嫌われたが、琉球の風水では正しい解釈によってうまく対処されたことがわかる。

 現代の家づくりで北東・南西方位を悪霊の通り道として恐れるのはナンセンスだが、方位の特徴をよく理解する必要がある。
 住宅の北東側は薄暗く、ジメジメしてカビやシロアリが発生しやすい。浴室などの水まわりを配置する時は、湿気や陰の気への配慮が必要だ。換気のしやすい窓や換気扇、水キレのよい浴室の床などのほか、壁、天井、水まわりのグッズなどは陽の気をもたらす白系統や淡い暖色系の色彩にすると快適な空間にすることが出来る。

※1:後漢の王充『論衡』訂鬼篇によれば、『山海経(せんがいきょう)』は紀元前6世紀頃に中国で成立した。

※2:『黄帝宅経』の成立年代は不明だが、中国では唐代、日本では江戸時代にすでに流布していたと考えられている。琉球への伝来時期は不明。





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