沖縄・琉球風水師
「和来龍(わらいりゅう)」
久米島博物館所蔵・與世永家文書の修復始まる
2024 / 06 / 24

 久米島博物館から、與世永家文書が修復されることになったという連絡がありました。
これらの資料に少なからず関わってきましたので、とても嬉しくてnewsの記事にしました。

 沖縄が琉球だった時代に中国や日本から伝わった知識や文化の産物である書物は、首里・那覇・久米村を中心に存在していましたが、先の沖縄戦で壊滅状態になりました。
 戦災の少なかった久米島では、琉球時代の書籍や筆写された文書、メモ書きなどが島の有力者の家に残されていました。それらは、家文書として子孫に代々受け継がれ、年一回蔵から出して虫干しなどされてきましたが、経年劣化が進み、個人では維持管理できない状態になったため久米島博物館に寄託されました。

 寄託されているのは、旧具志川間切西銘村の有力な地方役人だった上江洲(うえず)家、その分家の與世永(よせなが)家、近現代に風水師・三世相(サンジンソウ)を出した吉濱(よしはま)家、宮城(みやぎ)家の家文書類です。
 この中で大きな比重を占めているのが、占文・祈願文・祭文などの神事に関わる文書群や数多くの日選・風水・医術などの術数書です。

 琉球に伝えられた術数の知識は忘れ去られたり、あいまいに伝承されたりしているのが現状です。琉球王朝時代の人々の価値観や考え方を知るためには当時の人々の書いた文書や読んだ書物を調べることが大切ですが、今の沖縄にはわずかしか残っていません。

 久米島博物館に寄託されている家文書類については、2009年に「上江洲家資料」が県指定有形文化財に指定されて文化遺産としての価値が認められました。
 また、2013年から沖縄振興特別推進交付金事業に採択され、「上江洲家資料(歴史資料)」を中心として保存のための修復が定期的に実施されてきました。
 そして、2023年には上江洲家関連資料1905点(文書・記録類1589点、地図・絵図類31点、典籍類114点、書画類82点、器物類89点)が国の重要文化財(歴史資料)に指定されています。

 私が與世永家文書にある風水関係書類を閲覧した当時は、数十枚の紙片が茶封筒に入れられていました。虫食いなどによる損傷が激しく、今にも破れ落ちそうな状態で、竹のピンセットで、一枚一枚傷つけないように、はがしながら写真撮影をした記憶があります。

與世永家文書風水資料
経年劣化や虫食いなどにより損傷を受けた風水資料の修復が待たれる(写真は筆者が研究用に撮影した資料をプリントアウトしたもの)

 撮影した資料を見て比較的良好な状態のものから解読を始めました。
 與世永家文書「風水書」には琉球王朝時代の風水術として特に重要と思われる内容が書かれており、一部を翻刻・訳注して2021年から2023年にかけて久米島博物館紀要に発表しました。
 また、蔡温が行った首里城の風水判断の中で、それまで疑問とされていた正殿の向きや浮道の角度のずれなどの判断について、與世永家文書「風水書」に書かれていた三合水法を適用すると判断内容が一致することが確認できました。
 2022年には、拙著『「沖縄風水学」入門』において、蔡温が行った首里城の風水判断と共に與世永家文書「風水書」の巒頭法(形勢法)と三合水法に関する部分を現代語に訳して紹介しました。

 現代は観光産業が拡大して大型ホテルやテーマパーク、大型ショッピングセンターなどの大規模開発が進んでいます。経済的な発展をもたらすこれらの開発は、一方で昔からの自然や景観を変え、やがて人々の暮らしや価値観も変えていくと思われます。
 琉球王朝時代の先人たちの暮らしや価値観、考え方が記された古文書類は、何もしなければ時間と共に朽ちていく運命にあります。これらを修復して残すことは、王朝時代の人々が大切にしてきたことを彼らに代わって伝えていくことになるでしょう。

 與世永家文書の修復作業は2024年の5月から始まり、6~7年かかるということでした。修復が済んだら、より多くの人が閲覧できるようになるそうです。






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